BLUE SKYの神様へ〜変わらない気持ち〜


 

  

 いつもそうだ・・・・・。

 いつも笑って、いつも私を気遣う。

 私はいつもあなたの後ろを付いていくだけ・・・・・・。

 そう、あの日から・・・・・。

 

 

 「はあ・・・」

本部で、資料の整理をしている最中私は思いっきりため息をついた。

 「どうした?何かあったか?」

 「別に・・・」

 「疲れがたまってるんじゃないか?」

 そう言ってライは私の顔を見てムウっと睨んだ。

 「何もありません」

 「いや・・・疲れがたまってる。

  肌のあれ具合とか、化粧ののりとかがいつもより・・・」

 「何か言いましたか?」

 「あはは・・・冗談、冗談・・・」

 私の睨む顔を見て、ライはあの日と変わらない顔で笑った。

 ライは長以外の仕事をもらっていないため、いつもこうして私の仕事を眺めているだけの日常を過ごしている。

 それか、人間の作ったステンドガラスを眺めるか、昼寝ぐらいである。

 「じゃあ私はそろそろ・・・・・・・」

 「そうそう、仕事はお休みしてゆっくり・・・・・」

 「いえ、これから資料庫に行って調べ物を」

 「あらら・・・・そう」

 ライはあははと軽く笑った。

 「では失礼します」

 「アグニス!」

 私が本部の入り口を出ようとするとライが呼び止める。

 「本当に、休めよ」

 「ええ・・・分かったわ」

 ライの真剣な顔に私は少し笑い外に出た。

 資料庫までものの数分、そこから私は必要な資料を探し出す。

 一つの大きな倉庫を丸々使っているにも関わらず、ここの資料は収まりきらない。

 天井につくぐらいの本棚にびっしり詰まれた本はほとんど色あせている。

 古代からの資料とはいえ・・・・・・・

 「人間は書物が好きな人種だったのかしら・・・・・・・・」

 私はぼそりと独り言を言った。

 「そして、私はどうしてこんなに資料あさりが好きになったのかしら」 

 めがねを上げながら目当ての本を見つける。

 その本に手を伸ばそうとすると・・・・・・。

 「あ・・・・・・・」

 その隣に薄い本を見つける。

 その本を取り出し、表紙を見つめる。

 『十七年・・・・・・・名簿』

 それ以外の文字は煤けて見えなくなっている。

 私はその本をぎゅっと抱いた。

 

 

 

 

 どうしても世界が見たかった。

 どうしても自分で見たいものがあった。

子供の頃の私は。

 本だけでは私は納得できなかった。

 それだけで飛び出した私の住んでいた村。

 ビーストで構成されたその村は私と同じ種族が集まっている。

 私の種族、それはモノを記憶し、つづり、保存していく。頭脳のたえた種族だった。

 そのため、神々はその能力の利用を理由に私達の種族を捉えていた。

 隠れるように生活するビースト。

 だから私はその種族も、ビーストである自分も嫌いだった。

 どうすればこのビーストである自分を変えられるか。

 私はずっとその村の資料を読み続けていた。

 その時、見た文章。

 『三年前に、新しいビーストの反乱軍が出来た。

 名前は・・・シルメリア。

 ビーストにとっては最後の砦』

 ここなら・・・ビーストである自分をやめられるかもしれない。

 私のシルメリアへの期待は大きく膨らんでいった。

 私はこっそり村を抜け出し、もりを抜け、シルメリアを目指した。

 幼い私一人で。

  本でしか知らない世界。
 
  それはあの頃の私にはつらすぎた。

  心も、体も、希望も、全て削られていった。

 そしていつの間にやら私はもう歩くことも出来ない、こん睡状態になっていた。

 「もう・・・・・いいかなあ」

 独り言をいい、私は森を抜けた丘のふもとでバタリと倒れた。

 こんな所で死ぬのかなあとため息をつく。

 「行きたかったぁ・・・・・」

 「何処に?」

 「!」

 突然自分の声を違う声が聞こえ私は起き上がった。

 幼い私でも警戒することを覚えていたため、構えの体制をとる。

 少年は私より少し年は上のようだ。

 水色の髪に透き通った青の瞳を持っていた。

 「こんな所で寝たら風邪引くよ?」

 「・・・・・・・」

 「お腹すいてない?」

 そう言って男の子はパンと水を取り出した。

 丁寧に半分に分け、私に差し出す。

 「どうぞ」

 「・・・・・・」

 「僕もお腹ぺこぺこでさ」

 「・・・・・・」

 私が警戒しているのを知ってか知らずか男の子は大きな口を開け、パンにかぶりついた。

 そんな少年の光景に警戒を解き、私はその場に座った。

 そして半分のパンをかじる。

 「おいしい・・・・」

 「うん。

  君はどこから来たの?」

 男の子はあっという間にパンを食べ終え、私の顔を覗き込んだ。

 「その耳はビースト?」

 「あ!」

 大きなマフラーで隠していた耳がパンを食べたことにより、ずれて見えていた。

 「これは・・・・・」

 「大丈夫。僕もビーストだよ」

 「え・・・・・?」

 「僕は人魚と天使のハーフなんだ」

 その子はうれしそうに言った。

 いつもビーストの自分を嫌っていた私にとっその子の笑顔は私の心を変えた物だった。

 「ビーストを…嫌がらないの?」

 「何で?」

 「何でって・・・・」

 男の子の不思議そうな顔に私は少しとまどった。

 「神とかから隠れなきゃいけないし、変な能力とか尽くし・・・」

 「何言ってんの!ビーストである事は僕の誇りだよ!」

 男の子は急に私に近づき怒った。

 「そう・・・・・・・なんだ」

私は突然怒られて思わず目を丸くした。

しかし、あまりにも男の子が真剣に怒ったので思わず笑ってしまった。

 「何がおかしいの!?」

 「ごめん。何でもない」

 そう言って涙も流した。

 「今度は泣くの?」

 男の子は不思議そうな顔で私を見つめた。

 「ごめん・・・・・・ごめん」

 「あ!」

 男の子は急に声を上げ、空を見た。

「ちょっと・・・・・一緒に来て!」

 「何?」

 「いいから!」

 男に手を握られ、丘を駆け上がる。

 丘を登りきるとそこには。

 「きれい・・・・・」

 そこは遺跡が見渡せる場所だった。

 そして、その遺跡は赤い夕日色に染まっていた。

 「この時間を待ってたんだ」

 その子は夕日色の顔を私に見せ、太陽に向かって手を合わせた。 

 「・・・・・・・」

 「何かのおまじない?」

 「うん」

 「・・・・・・・」

 大きな沈黙の後、

 遺跡の方から人々が現れ、慌しくなった。

 「・・・・・聞こえた!」

 男の子はそういった。

 よく耳を澄ましてみると、赤ん坊のような泣き声が聞こえる。

 「生まれたんだ!」

 「え?」

 「おまじないが利いた!」

 男の子はそう言って急な坂を下った。

 「あの!」

 「ようこそシルメリアへ!」

 「え?」

 うまく聞き取れなかった言葉に私は声を漏らす。

 「君を歓迎するよ!」

 「ここシルメリアって・・・・・・・」

 「ごめん今急ぐから」

 坂を下りきった少年はそう叫んだ。

 「急ぐって?」

 その子につられて私も声を上げて叫んだ。

 「僕の兄弟が生まれたんだ!」

 そう言ってにやけた顔で笑い男の子は去っていった。

 その時のあの笑顔は今でも忘れない。

 赤い夕日に見せたあの笑顔を。

 

 

 

 「で、何でここにアグニスがいるの?」

 「?」

 インペリアが一望できる丘の上に私は座って風景を眺めていた。

 「別に…」

 後ろからの声に振り向きもしないで私は言った。

 「ライこそどうして?」

 「なんとなく・・・・・・・」

 ライはいつもと変わらない返事をした。

 「そう」

 私もいつもと同じように言う。

 「・・・・・・・・・」

 言葉の交わさない時間・・・。

 不器用に歩く、左右違う足音が近付いてくる。

 「お腹すいてない?」

 「え?」

 ライの突然の言葉に振り向くと、あの時の幼い顔が一瞬映し出された。

 あの時の笑顔も・・・・・・・。

 「すいてない?」

 「・・・・・・ええ、すいてる」

 あの時の思いも。

 

 

 

 


 

〜あとがき〜

アグニス編どうでしたか?

なんだか私的には少々あやふやにしすぎた気がします。

ライとアグニスの出会いですね。

本編であまりアグニスの話を出せないので番外に出せてよかったです。

結構ほんわかですね〜もっと白熱したバトルで最初は敵対していたというのも考えたのですが

こっちのほうが二人にあってるきがしたのでこちらの話を採用しました。

ルイの誕生とかも・・・ちょいと入れてみたり?


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