BLUE SKYの神様へ〜開かずの扉〜


 

 

 

「はいご馳走様」

俺はそう言って食器を調理場の机の上に置いた。

「あら、レイン君。ごめんなさいね。私達の仕事なのに」

調理場のメイド達が言う。

「いえ、どうせ散歩ついでですし」

俺はそう言って調理場を出た。

調理場を出ると、すぐに和風の庭が広がる。

その和の雰囲気に似合う着物をアレンジした服を着こなしている背中が俺の目に止まった。

その背中は一生懸命に蝶の舞う姿を追っている。

後ろ髪は空色の光を放ち、赤のリボンでポニーテールをしている。

「シラ!」

俺の声にその背中はこちらを向いた。

少し眠そうな目は青く深い色をしている。

そして、俺を見つけたその顔はゆっくり微笑んだ。

俺はシラの方に歩きながら肩までついてきた緑髪を触った。

シラの護衛になってからはや数ヶ月の月日がたっているある日、いつもどおり昼食を終え、シラと俺は昼下がりのザラードベイスを散歩していた。

「行くか?」

俺の質問にシラはコクンとうなずく。

散歩コースはいつもバラバラで、今日はなんとなく庭ばかりをあるいていた。

話をしながら・・・と言ってもほとんど俺で、シラは返事や、笑い声以外めったに出さなかった。

ザラードベイスは今日も穏やかに進み、メイドや、門兵が慌ただしく仕事をしていた。

「あ!」

俺は目の前の二つの影を見つけた。

「っちょ・・・シラ、こっち!」

俺はシラの手を引っ張り、植木の陰に隠れた。

そして、植木から少し顔を出して前を見る。

シラもまねする。

そこには5大上神であるフィール様とフルーラ様がいた。

2人は仲良く歩いている。

俺達は無言で目の前を過ぎていく2人を見送った。

2人が完全に通り過ぎた後に俺達は立ち上がり、葉っぱを叩き落した。

「やっぱりあの2人・・・なんか怪しいな」

「あや・・・しい?」

シラが自分の髪の毛に付いたゴミを一個づつ落としながら聞いてきた。

「シラ・・・こんなにあるゴミ一個づつ取ってたら日が沈むぞ」

おれはそう言いながらシラの頭に乗っかっている葉っぱをはたいて落とした。

「つまりは・・・どういう関係かってこと」

「関係・・・・・?」

シラはまた首をかしげる。

「そ!」

俺は短く答える。

「フィールとフルーラ仲良し・・・・」

「あ―・・・・。シラ・・・そういう事じゃなくてだな」

「仲良くないの・・・?」

「仲良いけど・・・・じゃあなくてだなぁ」

「じゃあなくて?」

「ああ・・・・まあいいか」

俺はシラとの話を中断して、2人の背中を見た。

と、俺の裾が引っ張られるのに気付いた。

「どうした?」

シラは俺を見ると前を向き指差した。

「あれ・・・」

シラの指している先にはメイド達が何人か集まっている。

「何かやってるな。何やってんだろう」

「ろ・・・」

俺の言葉の語尾をシラが言う。

俺はシラに裾を握らせたまま近づいた。

「何をしているんですか?」

「え?あ!最神様」

メイドたちはシラに向かって肩膝をついて頭を下げる。

そしてまた立ち上がった。

「この扉が開かないんです。」

「昔から開かなくて」

「何があるのか確かめたいなあと・・・・」

メイドたちは代わり代わり話す。

見てみるとメイドたちの後ろには扉がたたずんでいる。

「へぇ〜」

俺はノブを回す。

「鍵は?」

「ここに。もう開けてあるはずなんです」

メイドは頑丈な鍵を俺に見せてくれた。

「噂ではここで何かの実験がされているとか・・・」

「化け物が棲み付いてるとか・・・・・」

「別の世界に繋がっているとか」

そう言ってメイド達は一斉に身震いした。

「ほ〜」

俺は戸を見つめた。

「開けてみますか?」

俺はメイド達に言った。

「開けられますか?」

メイド達は興味心身に聞いてくる。

「ええ。これぐらいなら力づくで」

俺は指をボキボキならした。

「シラ、はい。裾はなして。何かあったら困るから。」

そう言って裾を強く握るシラの手を放して、俺は前にでる。

「レイン・・・」

「大丈夫これぐらい」

俺はドアノブに手をかけ、壁に足をつける。

「レイン・・・あのね」

シラが横に来て何かを話ている。

けど下を向いているのでなんと言っているのか分からない。

「ふんぬぅ・・・・・」

俺は力を入れ、戸を引っ張った。

「あのね・・・」

「もう少し・・・・」

シラが俺を見つめる。

「そこ・・・私の」

「・・・・・・・・・・・っ」

メイド達が期待の目を向ける。

バキババキバキ!!!

鈍い音がする。

「私の本棚なの・・・・」

「・・・・・・・・・へ?」

バキンッ!

そんな音と共に戸がはずれ、中から大量の本が雪崩のように俺に襲ってくる。

「うわっわわわわわわわあああああ」

俺は本の中に生き埋めになった・・・・。

初めてだった・・・本で溺れたの。

 

 

 

 

俺はむっくりとベッドから起き上がった。

外からチュンチュンと鳥の声がする。

ボサボサの頭をかく。

「シラのところ行かなきゃ」

そう言って立ちあがった。

身なりを整えて廊下を歩く。

開かずの扉を横切る。

その扉は何も無いようにたたずんでいた。

俺は扉をちらりと見てシラのいる部屋に向かった。




++あとがき++

今回は結構楽しく書けましたね。
シラとレインの二人を書けたし、フィールとフルーラも書けたし。
満足満足。
ほのぼのでしたし、ずっとかきたかったんですよね。
暗い内容で行く本編なんで、こんな内容を作っているとホンワカします。
んふふ〜




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