BLUE SKYの神様へ〜風に追われて〜
一瞬全ての動きが止まる。
俺の刀は男の腹部に刺さり、男の掌にある渦は少しづつ小さくなっていく。
俺は刺さっている刀を真横に引き抜いた。
「きゃぁぁぁぁあ!!」
後ろでルシーナの叫び声が聞こえる。
それと同時に突風が吹き、俺の隣にいる男は一気に砂に変わった。
そして、跡形もなく消えた。
俺はそれを見ると後ろに歩き出し、足が埋まって抜けない盗賊達の間を通り、腰の抜けたボスの前で立ち止まった。
「ひぃ・・・人殺し!」
「人殺しをしようとしたのは、誰だっての・・」
俺は邪魔な前髪をかき上げた。そして刀をボスの首元に突きつけた。
「誰に依頼された!」
上神か?いや・・・違う・・。
「あ、あいつだよ!さっきお前が殺した・・あいつに!」
「あいつは人じゃない。悪魔の砂人形・・・」
待てよ・・という事は砂人形を操っている奴がいるはず・・。
『あんたの店が・・・今、盗賊に襲われてる』
俺の頭の中にその言葉が入ってきた。
俺は盗賊のボスに背を向け、ルシーナの方に歩いて行った。
「レイン・・・あなた・・・」
ルシーナが話しかけてきたが、それどころではない。
俺はルシーナの後ろにいたおじさんの肩を掴み、壁に押し付けた。
そして刀を首元に持っていった。
「ご苦労なこった。
こんなことまでして俺を殺そうとする悪魔さんよぉ」
「な、何で・・・分かった」
怯えたおじさんは声を震わせながら言った。
「さっき、お前は『今盗賊に襲われている』と言った。
だが実際は、俺達がここへ到着してから盗賊達は店に入った」
「・・・」
「お前がここに来てからだよな?」
「・・・・」
「そうでもしなければ、お前は砂人形を思い通り動かせない」
「お、俺を殺すのか?」
「殺さない」
俺はゆっくりと男の見えるようにして左目を開いた。
「ヒィ!!」
男は震え上がった。
「悪魔共に伝えろ!俺はお前等の元には行かない。
お前等に殺される事も無いとな!!」
そう言って、俺は男を突き放した。
男は何度もつまづきながら、人混みの中へと消えていった。
それと同時に、俺が、能力の力を抜き盗賊の動かなくなっていた足も地面から抜けるようになった。それに気付いた盗賊達は慌てるように逃げていった。
俺は主人の所まで行く。
後ろからルシーナが走って行き、父親に抱きついた。
「悪かった」
そう言った俺の顔を、二人は怯えるように見てきた。
「お前さんは・・・・」
俺は主人の言葉を最後まで聞かないうちに歩き出した。
周りに集まった野次馬共が自然と道を作っていく。
俺はその道を通り過ぎた。
夕方も終わりを告げ、暗闇の世界へと移り変わっていく。
町外れまで来た俺は、橋の上に小さな光が向かって来るのを見つけた。
「もう行くのかい?」
「・・・」
暗闇の中から出てきたのは、カンテラを持ったザマンだった。
俺は返事をせず、ザマンの横を通り過ぎた。
「お主の運命・・・変わる道標を教えよう」
「!!!」
俺は振り向き、ザマンを見た。
「ラミアという老婆を訪ねてみな」
「そいつは・・・」
「あの山脈を越えて、アストラ平原を抜けたところにある森に住んでおる」
「・・・助かる。ありがとう」
俺は前を向いた。
「早く行った方がいい。
お前を追って、誰かが来ている。
会うとやっかいなんだろ?何かと聞かれるぞ」
「・・・・・・・」
「早くお行き。
あんたの運命は暗くて先は見えない。だが必ず光が射してくる。
進むしかないのだよ・・あんたは」
俺は何も話さず、それだけ聞くと走り出した。
息が切れるまで。
走るのに邪魔だった突風が途中で送り風になる。
走って、走って・・・。
風に追われるように・・・。