BLUE SKYに歌声を〜プロローグ〜
暗闇の部屋にそよ風が吹き、カーテンが揺れる。
静かな住宅街に車のエンジン音が鳴り響き、遠のいていった。
頭を布団に埋め、1階の物音が聞こえないことを確認すると布団から抜け出し近くに置いてあった眼鏡をかける。
窓から1階を覗き、2階の両隣の部屋も電気がついていないことを再確認する。
問題はないようだ。
床に膝をつき、ベッドの下に隠している木箱を取り出す。
ベッドに座りなおし、蓋を開けた。
中には小さなキーボード、と何枚もの5線譜が入っている。
「あ・・あーーー」
声も問題ない。
もう一度全神経をフルに使い、辺りの気配を感じ取る。
「よし!」
キーボードにそっと指を乗せたその時。
「ふぬぁぁ・・・・」
「・・・?」
何か声が・・・した?
立ち上がり譜面がベッドに落ちないように整えた後、窓の所まで歩く。
月明かりがあるといっても、部屋の中は薄暗くてよく見えない。
窓のサンに手をかけ、外に目を凝らす。
「やっぱり何も・・・」
「あ・・・あの・・・」
「・・・!」
辺りを見回す。いつもと何も変わらない風景。
「こっち、こっち・・・・・下!下!」
言われるままに下を向く。
「へ・・・・?」
そこにいるのは、窓に手をかけて必死に落ちまいと踏ん張る少年だった。
「・・・あ・・・・あの・・・」
少年が話しかけてくる。
「へ?」
まさか・・・泥棒?
「た・・・助けて・・・・」
少年の手はプルプルと震えていた。
「え・・?あ!はい」
そのまま少年の手を握って部屋の中に引っ張り込む。
ダァー
部屋に引き込んだ後、その少年は全く動かなくなってしまった。
「・・・・・あのぉ・・・」
そっと肩を揺らす。
「・・・・ぐう、ぐう」
「寝てる・・・」
少年は気持ち良さそうにいびきをかいていた。
「・・!」
その時、背中に見知らぬ物体を見つけ、仰天した。
それは普通の人間には無いモノ。
「っ・・・翼・・・」