BLUE SKYの神様へ〜決戦!ガーゴイル〜
ズーン・・・・
大きな音が響き、巨大なイグアナが地面にたたきつけられる。
「ほっ!7頭目!」
ダングは、自分の3倍はあるレグナの首をはねた。
「ダング、倒した数を数えるのは止めなさい。獣とはいえ、殺生しているのですから」
そう言って、コヨーテは試験管の中に入っている光の玉を掌にのせた。
光の玉はみるみる大きくなり手のひらより大きくなったところでコヨーテは目の前のレグナに投げつけた。
その光の玉はちょうどレグナの口に入り、そいつは七色の光とともに消えていった。
「今回の調合は成功ですかね」
コヨーテはうれしそうになくなった瓶をしまう。
「こんなに多かったら数も数えたくなるぜ・・・」
ダングは手を一回ブンと振って言った。
「まあ確かに・・・」
コヨーテは小さくため息をきながら、次の標的を探している。
「レイン、後ろだ!」
スグローグの叫び声に俺は振り返り、襲ってくるレグナの腹を切り裂いた。
「あのどでかい化け物をどうにかせんことには・・・・」
隣に来たスグローグがぼやく。
スグローグの見つめる先には、ギラギラとした大きな目と、鋭い牙を持ったガーゴイルと、交戦中のルイの姿が見える。
「あのルイでも手こずっているのだ・・・すけだちに行くぞダング!」
「分かった!」
そう言ってスグローグとダングは走り出した。
「ルイ。二人がそちらに行きました。コスモスとミネルを連れてこっちへ!」
コヨーテが叫ぶと、ルイはピンク色の髪をした女の子と、茶髪でめがねをかけた男の子を連れてこっちに向かってくる。
「何だ、あいつ・・・刀が効かない!?」
ルイはコヨーテの隣に来ると言った。
「確かに・・・他の獣とは違いますね」
コヨーテがそれに答える。
「当然だ・・・」
俺はその言葉に突っ込んだ。
「・・・・・・・?レインあなたはあいつと戦った事があるのですか?」
「いや・・・・本で読んだんだよ」
確か、ザラードベイスで嫌々ながら勉強した中に、そんな名前があったはずだ。
「大丈夫ですか?小春、コスモス、ミネル」
コヨーテが叫ぶ。
「大丈夫・・・少し、死にかけたけど・・・・」
男の子が眼鏡をかけなおしながら言った。
「ほんと、助けに来てくれてありがとう。小春も来てくれたんだ」
コスモスに言われて、少し驚いた小春は首を縦に振った。
その時、ダングとスグローグの方から炎が上がった。
「ダングとスグローグはビーストの中でもトップクラスの炎使いです。あの2人にかかったらひとたまりも・・・・」
「び、ビースト!!?」
俺がそう言ったと同時に、さっきの3倍の炎が辺りを包んだ。
俺達の周りにいる獣たちが一斉に身を引く。
スグローグ達の周り数メートルが焼け野原になっていく。
そして、その炎の中にスグローグとダングの姿が見えた。
「やはりすごいな・・・あいつ等」
ルイがぼそりと言った。
「ガーゴイルの姿が見当たりませんね」
コヨーテが俺に話しかけて来る。
「確かに・・・・」
俺はそう言って辺りを見渡した。
・・・・!!!!!
思い出した!!!
「皆、下がれ!!!」
「「!!!?」」
俺が叫んだ途端、炎の渦からガーゴイルが俺達に向かってきた。
ギャアアアァァァァッ!!!!
耳をふさぐような甲高い声を上げながら、そいつは俺に牙を向けてきた。
俺は刀でそいつの牙を受け止める。
「グッ・・・・」
牙は防いだが、牙に溶け込んだ毒が俺の方に流れてくるのが分かる。
「レイン!」
コヨーテの声が辺りに響いた。
「くそッ!!!」
ルイが叫びながら刀を構え、ガーゴイルの目玉に向かって突き立てた。
しかし、ガーゴイルは何の反応も見せない。
俺は刀で無理やり押し出し、ガーゴイルから距離を置いた。
左肩が焼けるように熱い。
ルイの刀で切りつけられても、何の反応も見せないガーゴイルは、次の標的を今度は俺にでははくコスモス、小春、ミネルに定めた。
そしてそのまま走り出し毒がべっとりついた牙を向ける。
「きゃあああぁぁぁぁ!!!」
コスモスの悲鳴が響く。
「「やめろ!」」
俺とルイは同時に叫んび、ガーゴイルの前に立ちはだかって、刀を構えた。
さらに、同時に俺は右側、ルイは左側の口の中へ刀を入れる。
「!!」
ガーゴイルはぴたりと動きを止め、俺たちの刀を奥歯でかんだまま離さなくなった。
俺達は力いっぱい怪物の腹に向かって刀を引っ張る。
しかし、ガーゴイルは刀をくわえたまま動かない。
「クソッ!!このまま切り裂いてやりたい・・・」
ガーゴイルの横顔を睨みながらルイが言う。
「おい!」
「何だ!!!」
俺の声にルイは腹立たしく答えた。
力が入り、刀がガタガタと震える。
「能力は使えるか?」
「当然だ!!」
「一気に爆発させる技を持ってるか?」
「ああ・・・」
「力を貸せ!いい案がある」
「案?信用できるのか!!?」
「ここにいる奴の命を救いたいならな・・・・」
ルイは俺に向かって睨んだ。
「分かった。」
「俺が合図したらこいつの頭にぶち込め」
俺はそれだけ言うと、刀を手前に引いた。
ガーゴイルは体力が尽きてきたのか、すんなり刀を放した。
俺は4、5歩後ろに下がる。
「コヨーテ、時間稼ぎを頼めるか?」
「分かりました」
コヨーテは新しい試験管を取り出して、2、3歩前に出た。
ルイも俺の隣まで下がって来る。
「何をするつもりだ!!?」
「見ていれば分かる・・・」
俺は握っている刀に全神経を集中させる。
刀は徐々に冷たい冷気をまとい始めた。
コヨーテがぶつけた試験管が、電流を発しながらガーゴイルに激突する。
やはり効いていないようだ。
「いいか?」
「ああ」
それの答えを聞くと、俺はガーゴイルに向かって走り出した。
コヨーテの横から俺を見つけたガーゴイルが、俺に向かって襲ってくる。
俺は怪物の牙をすれすれで交わし、ガーゴイルのあごの部分にもぐりこんだ。
そしてそのまま冷気に包まれた刀で切りつけた。
ギュアアアアッ!!!!
冷気は一気に辺りへ広がり、ガーゴイルを包み込む。
ガーゴイルは動めきながらピキピキと白く凍っていく。
「今だ!」
「はあっ!!!」
ルイは飛び上がり、刀を思いっきりガーゴイルの頭に突き立てた。
凍りつきかけたガーゴイルに、少しずつひびが入っていく。
バリイイイィィィィン!!!!
そして、ものすごい爆発音と共に粉々に割れていった。
「危ない!!!」
ミネルの声に俺は上を向いた。
俺の上には大きなガーゴイルの凍りづけの固まりが落ちてきていた。
「・・・・・・ッ」
突然腕の痛みが増してきた。
くそっ・・・防ぎきれ・・・・
バアアアアァァァンッ!!!
何か破裂したような音とともに、固まりは何等分かに分かれて地面に落ちていく。
ほんの少し火薬の匂いが俺の鼻に届いてくる。
その音の正体はミネルという少年の手に握られていた。
・・・・けっ・・・・・・拳銃!!!!