BLUE SKYの神様へ〜太陽の位置〜
辺りの風景は昨日となんら変わっていなかった。強いて言えば、レグナの死骸・・・いや食料が跡形もなく消えている事位だった。
やはりまだみんなは寝ているのだろう。昨晩の騒ぎとは比べ物にならないほど静かだ。
俺が生活するのは2区域。昨日行った会議室や、中央の広場に一番近い区域だ。
俺は焚き火をしていたあたりに足を運んだ。ただぶらぶらあたりはして、あの夢から離れようとしていた。
まだ焦げ臭い匂いが立ち込めている。
ここが2区域の食卓なのだろう。
だだっ広い空き地にしか見えないが・・・・・。
ぶらぶらと食卓の周りを歩きながら、明るくなってきた空を眺めていた俺は人影を見つけた。
「・・・・えぇっと・・・・・」
そいつは右手にフライパン。左手に鉄のパイプを持っていて地面にバツ印が付いた所に立っていた。
「・・・・名前・・・・名前・・・・」
俺はそいつの名前を頭の中から探す・・。
「えぇっと・・・サリエル?」
その言葉に女の子はこちらに気づき振り向いた。
「え?あ、はい!」
ビックリ顔のサリエルは一瞬間を空けた。
「おはようございます。お早いですね」
「ああ・・・・おはよう」
俺の目はついつい背中の黒い羽にいく。
「何やってんだ?」
「ああ、朝の儀式です」
サリエルは嬉しそうに言った。
「儀式・・・・?」
「はい!」
そう言うとサリエルはまた前を向いて空を見上げた。
「この印の位置から見て、あの木の枝に太陽が来たときが合図です」
そう言って嬉しそうに話すが、俺には何を言っているのか分からなかった。
「ええっと・・・・お前は何班なんだ?」
「あ!私ですか?私は第5班および10班です。
治療班と調理班です」
「マルフィスの班か」
「はい。あ!ケガの調子はどうですか?」
サリエルが心配そうに見てくる。
「ああ、治った」
「治った!そんな馬鹿な!冗談はやめて下さいよ」
「いや・・・お前らの治療のおかげだ。あと、俺には人並みはずれた再生能力があるみたいだからな」
「分かんないですけど、分かりました」
無理やり納得したようだ。
「まだ5班になって間がないので・・・そこらへんは保留です」
「10班は?」
「子どもの頃からやってますから」
そう言って、少し先の建物を指差した。
指した先には火のともった大きな小屋があり、なにやら煙が立ち込めていた。明らかに食事の支度をしている。
「調理班は各区域に分かれていてどこの料理がおいしいかで争いをしたりします。
が、厨房長が優しくて結構楽しい班ですよ。
レインさんは6班ですよね?」
「ん?・・・・ああ。第6班および第7班だ」
その言葉にサリエルの顔が急変する。
「・・・・俺何か変なこと言ったか?」
「・・・す」
「す?」
俺はサリエルの言葉を聞き返す。
「すごい!すごいです!シルメリアに入ってきてすぐ7班に入ったなんて!」
サリエルが尊敬の眼差しで俺を見てくる。
「そ・・・そうなのか?」
「はい!そりゃあもう!
でも昨日の活躍でしたら当然ですかね?」
「・・・・」
俺はサリエルのテンションに追いつかず、頭をかいた。
「!」
そしてあることに気づいた。
「おい」
「・・・・?何ですか?」
「お前の言っていた木の枝まで太陽来たみたいだぞ?」
「へぇ?」
サリエルはなんともいえない声を出し後ろを振り返った。
山は光に満ち、太陽が俺たちの顔を眩しく照らした。
「ああああぁぁぁ!」
そう言ってサリエルが叫ぶと、持っていたフライパンと鉄パイプを頭の上に上げ思いっきり叩き出した。
カンカンカンカン・・・・・・。
「のうわ!」
俺は思わず耳をふさいだ。
少しの間その状態が続き、サリエルは叩き終わってハアとため息をついた。
「もう少しで遅刻でした・・・・」
「・・・・・」
俺は耳鳴りがする耳から手を離した。
「それって・・・・」
「朝の儀式です」
サリエルはまた笑顔で答えた。
すると辺りが急に騒がしくなった。
「なるほど・・・・目覚ましか」
俺はやっと理解した。
カンカンカンカン・・・・・・・
少し離れたところからも同じような音が聞こえる。
「ああ、違う区域の合図です」
サリエルが俺にそう言った。
「もうすぐ朝食が出来ますから少し待ってて下さい。きっと他の人達も起きてきますから」
そう言ってサリエルは調理班が作業しているのところに走っていった。
取り残された俺は、黒羽の女の子を痛みを覚えた耳を触りながら眺めていた。