BLUE SKYの神様へ〜夢から覚めて〜


「いやあぁぁぁぁ―――――――!!

いやだあぁぁ・・・・

私を一人にしないで!

一緒にお祝いするって約束したでしょ。

一緒にショートケーキ食べるって・・・・・・

うそつき・・・・・・・・嘘つき!

嫌だ!

いやだ!

行かないでぇぇ

置いてかないで!!

お兄ちゃん!

お兄ちゃん!!!!」

 

 

 

 

 

「―――――・・・・・・!

俺は思いっきり目を開いた。

「・・・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

息を切らし、汗をかいている。

左手は天井に向かって伸ばし、右手は心臓部を毛布と一緒に握っていた。

「・・・・はぁ・・・・・はぁ・・・・・」

また・・・・夢・・・・・。

俺は左手を見開いた左目に持っていく。

顔に乗った髪の毛がパラパラと落ちていった。

お兄ちゃん!

まだ、あの声が耳から離れない・・・・・。

俺はゆっくり体を起こし、大きなため息をついた。

辺りを見回す。

狭い部屋・・・・・・だが設備は完璧で、ベッドに洗面台、鏡に小さな机・・・・・。

まあ、さすがに電気までは通っていない為ロウソクが何本かあるが。

古代の人間のアパート跡だろう。この周りにはいくつも同じ部屋がある。

もちろん遺跡を使っているため、所々痛んではいる。

窓・・・・というより傷みで開いてしまった穴からはまだ朝日が出ておらず、少し明るくなった程度の空が見える。

両隣の部屋からは動きがなく、寝ているのだろう。

俺はベッドから降りると洗面台の前に立った。

蛇口をひねる。

ジャー・・・・・

水道は動いているようだ。

俺は思いっきり顔を洗った。

床に水が飛び散るが気にしない。

洗面台に両腕をつき、目の前の鏡を見る。

そこにはぼさぼさの緑髪に隠れた俺の顔があった。

そして左右色の違う瞳も・・・・・・。

『逆らおうともがいて、苦しんでることは運命を変えてるって事じゃないかな?』

 昨日のミネルの言葉があれからずっと頭の中を回っている。

 「・・・・・・・・・・・・はぁ」

 隣に吊るしてあるタオルで水の滴り落ちる顔を拭く。

 その時俺は着ているTシャツの下から見えている包帯に気づいた。

 今はもう痛みを感じない。

 俺はTシャツを脱いで肩に手を当ててみる。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 やはり、何も感じない。

 包帯を解く。

 何十にもしてある包帯を解き終えた俺は、もう一度鏡をのぞく。

 肩には何も残っておらず、昨日あれほど痛んだ記憶すら嘘なのではないかと思わせるほどだった。

 小春やマルフィスのおかげもあるが、大半は・・・・・・・・

 「呪い・・・・・・・・・のせいか・・・・・・・・・」

 そう、この呪いのせいで俺はほとんどの傷が数日で消えてしまう・・・。

 この左目の痛みもあっという間に無くなったし。

 しかし、マルフィス達に背中を見られなくて良かった。

 もし背中全体を見られていたら・・・・・・・・。

 自分ではザラードベイスで監禁された時に見た1度以外、見た事の無い紋章の存在を今、改めて感じた。

 俺は机の上にある赤いリボンを手に取り、鏡を見つめながらゆっくりと結んだ。

 そして昨日用意してもらった新しい服を着た。

 さすがに昨日まで着ていた服はガーゴイルの毒素でボロボロだったので、捨ててもらった。

 上着は綻びを直してくれたものが壁にかけてある。

 ベルトをつけ、壁によかっている刀を腰に挿す。

 そしてもう一度鏡を見て、赤く染まった目をゆっくりと閉じた。

 俺は一息つくとまだ静かな外へと歩き出し、入り口にかかっている布をくぐった。

 


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