BLUE SKYの神様へ〜悲しい晩餐〜




 「レインの旦那!」

 俺がインペリアの門をくぐると、すぐに調教班が馬の回収をしていた。

 その中でカイホンが声をかけてきたので、俺はそっちの方にシクスを進めた。

 「ご無事で何より・・・・・・」

 「ああ」

 俺はシクスから降り、手綱をカイホンに預けた。

 「状況は?」

 「へい。今のところ死者は十二人、怪我人は約四十人です。

  7班のほとんどの者は、中央広場に集まっています」

 「ライは?」

 「本部に」

 「分かった」

 俺はそのまま歩き出し、カイホンは次のドラゴンの回収に回った。

 俺は本部まで一直線に歩いた。

 道の周りには装備をはずし、くつろいでいる者が多く見られる。

 もう日が沈み、あちこちに焚き火がありそこに人が集まる。

 中央広場が見えた時、俺は立ち止まってしまった。

 「・・・・・・・・」

 そこには大きな炎が赤々と燃え、周りでドンチャン騒ぎをしている。

 まるでキャンプファイヤーだ。

 「・・・・・おい」

 俺は木陰で騒ぎを見ながら酒を飲んでいるライの姿を見つけた。

 「何だ、この騒ぎは?」

 「ん?おお、レインやっと帰ってきたか。無事で何より」

 「ああ・・・って」

 「にぎやかだろう!お前も騒いで来い!」

 「いや、俺は・・・ってな!」

 ライはいつものニヤリ顔で言った。

 「これは、昔からのならわしなんだ」

 「ならわし?」

 俺はライに差し出された酒の入ったビンを素直に受け取り、喉を潤す。

 「ああ。戦争は日が沈むと休戦になる。

  その間、死んでいく仲間の悲しみを払いのけ、このまま戦い続けられるようにこうやって火を焚く・・・・。

  悲しみを隠す為に・・・・・・」

 「ライ・・・・・・?」

 ライの顔はいつの間にか真剣になっていた。

 「本部にこれから向かう。レインも来てくれ」

 そう言いライは難しそうに歩き出した。

 俺はその後に続いた。

 周りの皆は酒を飲み、笑い、踊り、振舞う・・・・・。

 しかし、いつもとは何かが違う・・・・・・。

 そう、無理をしている。

 本部に向かうライの背中はいつものふにゃけたものでも、威厳のある長のものでもなく、ただこの状況を悲しむ背中に見えた。






 「皆ご苦労」

 ライがそう言って本部の部屋に入る。

 俺はその後に続く。

 「話し合いをしよう」

 そう言ってライはアグニスの横の席に着く。

 部屋には、コヨーテ、ダング、スグローグ、オギロッド、マルフィス、ルイ、そして赫菊とクレシットがいた。

 俺は皆が円になって座っている後ろの席に静かに着いた。

 「マルフィス状況を」

 「ああ・・・・・・」

 アグニスの声にマルフィスが話し出す。

 「怪我人の状況はまずまずだ。

  正直これだけの犠牲で済むとは思っていなかった。

  まあ途中で応援が来てくれてたおかげでこちらが有利になったからだろう」

 「本当だ。これだけの犠牲で収まっているのはやはり応援が来てくれだからだ」

 スグローグが言う。

 「ええ、私達ではどうにもなりませんでしたね」

 コヨーテがさらに言う。

 「いや、もう少し早ければさらに状況は変わっていた。

  すまない」

 クレシットが頭を下げる。

 「今回の戦闘はあまりにも急だったからな、まあこれが限界といえば限界だったけどな」

 赫菊が髪の毛をいじりながら言う。

 「しかし、これで終わったわけではない。

  これからだ!これから・・・・・・」

 ライが顔をゆがめた。

 その言葉に皆に緊張感が走る。

 それから明日の作戦へと話が進む・・・・・・。

 俺は何も話さず、それをただ聞いた。

 時々、ルイとオギロッドが俺を見てきたが、その理由は分かっている。

 ルイはやはり俺の存在が気になるのだろうし、オギロッドは多分俺の何かを感じ取っているだろう。

 もしくはもう俺の事情がバレているか、だ。

 俺はそれでもなお、会議が終わるまでその席を立たなかった。

 終わった時にはイスから立ち上がり、一気に伸びをしてしまった。

 「おい!」

 皆が部屋から出て行く中、俺は急に声をかけられた。

 「お前・・・・・・・っとーレイン!」

 「?」

 声の主は赫菊だった。

 その後ろにクレシットがいる。

 「何だ?」

 「お前、左目もう一度空けてみろ!」

 「何で・・・」

 「いいから!」

 俺は赫菊に睨まれ、仕方なく目を開けた。

 「クレシット・・・・・・・これ」

 「ああ。やはり呪いか・・・・・・・」

 「!」

 俺はクレシットの呪いという言葉に反応した。

 「何で知っている!?」

 「さあな」

 赫菊は嫌な笑みをした。











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