BLUE SKYの神様へ〜空からの応援〜


 全速力で走り、丘を登る。

 そのまま、ビーストに切りかかろうとする軍人の背中に刀を向けた。

 キーン・・・

 刀の弾く音が響いた。

 「クッ・・・」

 軍人は苦い顔をした。

 「もう・・・これ以上、死なせない!」

 俺はそいつに向かって叫んだ。

 その言葉は辺りの騒音と共に消えていく。

 「何が『死なせない』だ!」

 目の前の軍人が俺に激怒する。

 「兄者の命を絶ったのは、お前等だろうが!」

 「何・・・?」

 俺は刀を握り締め、聞いた。

 「貴様等が兄者を殺したせいで、この戦争が起こったんだ!

  兄者が何をした!?このビースト共!」

 「・・・・お前」

 兄者って・・・グレイン?

 戦車の元で命を絶った天使・・・。

 「ビーストは皆私が殺してやる!」

 「ち、違う!ビーストは何も悪くない!

  悪いのは・・・」

 悪いのは上神だ!

 アイツがグレインに、シルメリアの者が殺したように見せかけて自殺しろと命令したんだ!

 「何が違う!

  お前らビーストが悪い!

  この世に必要ない者共が!!!」

 「違う!悪いのは・・・・」

  そう、全て悪いのは・・・・

 「悪いのは・・・この俺だ・・・・」

 「何!?」

 俺の言葉にグレインの弟は驚きの表情をした。

 「・・・・・全て俺が悪い」

 そう、全て・・・。

 フィールを殺したのも、グレインを自殺に追いやったのも。

 「俺がグレインを殺した」

 「!!!」

 「俺が・・・・」

 「貴様が!」

 俺は軍人の上げる刀を両目で見つめた。

 そう、グレインに刀を突きつけられた時と同じだ・・・。

 俺が、何もかも悪い・・・。

 刀が振り下ろされる・・・。

 キーーーーーン

 刀がぶつかる音・・・。

 「ルイ!」

 俺の目の前にルイが現れ、刀で軍人の刀を受け止めていた。

 「何をぼさっとしている!」

 ルイが怒鳴る。

 「目の前を見ろ!

  お前はここにいるんだろう!?

  だったら戦え!」

 そう言ってルイはそいつの刀を弾き、軍人の刀は後ろに飛ばされた。

 「くそ・・・」

 軍人が刀を拾い、再び斬りかかろうとした。

 俺はルイの横に立ち、刀を構えた。

 「そこまでだ!」

 俺とルイ、軍人の間に緑色の体をしたビーストが飛び込んできた。

 そいつは体から出ているツルをまるで鞭のように扱い、軍人の腕を捕まえた。

 「赫菊(あかぎく)!!」

 ルイがそのビーストに言う。

 「悪かった。もう少し早く来るつもりだったんだが・・・」

 「・・・・・」

 ルイはなぜか反論せず、押し黙った。

 赫菊と呼ばれた男は鞭を引っ張ったまま軍人に言った。

 「軍人。もう日が沈んだ。

  これからは条約破りだ」

 「・・・・」

 軍人は手から刀を離し、俺達を睨んできた。

 条約・・・・。

 それは、戦争は日の出ている間だけという事。

 神々は日の沈んだ夜を無の時間としている。

 その為、戦争をしない事になっていた。

 条約を破ることは、軍人にとって最もしてはいけないことだ。

 軍人は渋々刀を鞘に戻し、俺の横に来た。

 「お前は必ず私が殺す。

  兄者の敵だ」

 「・・・・・」

 「私の名は惨雅(サンガ)」

 そう言って惨雅は、軍人の集まる方へと消えていった。

 俺はそいつの背中を見つめた。

 辺りを見回すともう戦いは冷めていて皆怪我人を助けていた。

 いきなり辺りにものすごい風が吹き荒れる。

 俺は空を見上げた。

 そこにはたくさんの・・・・・

 「何だ・・・・・?」

 「鳥人類だ」

 隣に来たオギロッドがそう言った。

 「ビーストの仲間だ。

  鳥との融合で、天界でも空が飛べる」

 確かに飛んでいる全ての者にはくちばしがあり、足は鳥のようだ。

 と、何人かが目の前に下りてきたかと思うと、突然俺の横にいるオギロッドに話しかけてきた。

 「すまない。もう少し早く加勢しに来たかったんだが・・・。

  赫菊達は先に着いたのだな・・・」

 「ああ・・・一足早くな」

 赫菊が話に入る。

 「イヤ・・・すまない、赫菊、クレシット」

 クレシットと呼ばれた鳥人類は他の者より大きく、体もがっしりしていた。それに何か、オギロッドと似たようなオーラがある。

 「もう日が暮れた。とにかく話は本部で」

 オギロッドはそれだけ言うと後ろを振り返り、歩き出した。

 俺はてっきり何か言われると思っていた。

 「お前・・・」

 俺は赫菊に声をかけられ、振り向く。

 「お前は見たことがない・・・。新入りか?」

 「ああ・・・・・」

 「へ〜」

 赫菊は俺の顔をジーッと見た。

 俺は両目を開けているのに気付いたがもう遅い、隣のクレシットまで俺を見てきた。

 「まあ、いいや。

  俺は南の植人種の長、赫菊。まぁよろしくな。

  で、こっちは」

 「北の鳥人類の長、クレシットだ」

 「レイン・・・だ」

 俺は名前だけ言うとジロジロ見る二人から離れるように、シクスを呼んだ。

 そして、左目を閉じた。

 オギロッドやルイ、クレシット達の後を追って本部に向かった。

 本部に向かうビースト達は始まりと同じ様に、列を成して進んでいる。

 途中でスグローグやダング、コヨーテ達と合流しながら俺達は自分たちの生きていける場所に向かった。

 沈みきった星空と共に。










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