BLUE SKYの神様へ〜風の鳴る時〜



俺は刀を抜き、体制に入った。

「準備はいいか!」

「出陣だ!」

ライ、そしてルイが叫ぶ。

俺はシクスの手綱を引っ張り前に進む。

隣にはダング、スグローグ、そしてコヨーテが歩いている。

後ろにはコスモスや、赫菊、クレシット率いる種族が歩いてくる。

昨日と同じ様に並び、翼を皆思いっきり広げた。

コスモスは鳥に乗って、鳥人類はそのまま自分で空に舞い上がった。

目の前の軍勢は昨日と同じぐらい。

今日の作戦はそのまま正面突破だ。

昨日のアレだけの騒ぎを軍本部でしているため、うかつに入り込めなくなっている。

その為、今日は正面から行く気だ。

「構え!」

オギロッドが叫ぶ。

弓隊が構える。

軍人も構えだす。

「放て!」

軍の方からたくさんの矢が飛んでくる。

自分たちの頭に振ってくるその時!

ライの溶液が矢を空中で止めていく。

もう驚かない。

それどころではないからだ。

「進め!」

オギロッド、ライ、ルイが馬を走らせ軍に突っ込んでいく。

皆もどんどん走っていく。

軍も、歩兵隊が進む。

ガシャーン・・・・

大きな音と共に戦争が始まった。

俺も、シクスを走らせ、刀を握る。

「ぉぉぉおおおおお!」

大きな声、金属音。

俺は軍人に突っ込んで入った。

刀は見事に受け流された。

しかし、シクスを動かし、そいつの足を斬りつけた。

返り血が俺の足元にかかる。

また次がやってくる。

俺は急所を避け、斬りかかった。

同じことを何度も繰り返す。

ドーン!

ものすごい爆発音。

俺は煙の出ている方を見る。

そこにはコヨーテの姿があった。

何本もの試験管を指の間に挟み、次々に攻撃を仕掛ける。

前後と向きをすばやく動き、それに合わせて白衣がなびく。

コヨーテの顔は無表情で、ガラスの瞳がまっすぐ前を見ていた。

さらにその奥にはスグローグ、そして姿の変わったダングがタッグで炎を操っている。

赤々と燃え上がる炎の中をものすごいスピードで攻撃するダングの姿は獣の姿をしていた。

と、急な水しぶきを後ろから浴び、振り返ると。

「ルイ!」

ルイが大きな水の竜巻を作り、刀でいっきに放出している。

あたりの者はひとたまりもなく倒れていく。

空を見上げると、巨大な鳥に乗ったコスモスが矢をいり、空中から狙っている。

コスモスが矢を射ると、その矢は数本に別れ、キーという機械音のような音を上げて地面に突き刺さる。

その周辺でクレシット率いる鳥人類が巨大な竜巻をお越して地面にいる軍人を攻撃していた。

「何ぼさっとしている!」

そう言われルイが俺の元に来た。

「兄貴は?」

「いや・・・・見ていない」

「そうか」

ルイはそれだけ言うとまた乗っているドラゴンを走らせた。

俺は後ろから襲ってきた軍人の腕を切り落とし、辺りを見回す。

何か・・・・・・・何かおかしい・・・・・。

俺は辺りの軍人を飛び越え、ライを探した。

何か分からないが、胸につっかえを感じる。

植人種の集まりが見えてきた。

皆それぞれの武器で戦っている。

「赫菊!」

俺は見つめた赫菊を呼んだ。

「レイン!」

赫菊は俺によってくる。

「どうした?」

「ライはどこにいる?」

「ライ?そういえば見てないな・・・・」

赫菊が辺りを見回す。

「何かいやな予感がする。ライのところに行きたい」

「ああ、確かに、何か変だ。
 軍人の動きが怪しい。何かたくらんでいるのかも知れない・・・・・・」

「乗れ!」

赫菊は俺の手を掴み、シクに乗った。

俺はシクスの手綱を思いっきり引っ張り走らせる。

攻撃してくる軍人は鞭を使って赫菊が払いのける。

やはり、何かいやな感覚がある・・・・・・・。

何だ?

「おい!あそこ!」

赫菊が指差した方向を見ると、少し丘になっているところに、ライ、オギロッド、アグニスがいる。

ライは溶液でガードし、アグニスはナイフを投げつけていた。

「ライ!」

俺はライに叫ぶ。

ライは気付き、目線が一瞬こっちに向く。

その時、ふいをつかれたライの後ろに軍人の影が飛び出す。

「ライ!!!!」

赫菊が叫び、シクスから飛び降りる。

そして、ものすごい速さでライの横に行き、攻撃してきた軍人の刀を肩で受けた。

「赫菊!」

俺はシクスから飛び降り、赫菊を切りつけた軍人を切った。

その軍人は大きな叫び声を上げ、その場に倒れた。

「クッそ!赫菊!」

ライがヒザをついた赫菊の横に座り込んだ。

「赫菊!」

「大丈夫。肩をやられただけだ」

赫菊はニヤリとライに笑った。

「だが!!」

赫菊の肩は骨が見えるように開ききっていた。

ライは次々攻撃してくる軍人にシールドを張り、赫菊をかばった。

その横で俺は攻撃に失敗した軍人を斬っていく。

数メートルにいた敵はアグニスが確実に仕留めていき、辺りに敵の姿は消えた。

数十メートル先まで死体の広がった空間の先にはまだ大きな音を上げて戦いは続いている。

俺達はひとまず、赫菊の傷を見ようと集まった。

「若!」

オギロッドの声に皆が一斉に後ろを振り向いた。

赫菊に気をとられて、がら空きになっていたライの背後を今度はオギロッドが回りそして・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「オギロッドォォォォ!」

ライの声が大きく響く・・・。

ライを守ったオギロッドは背中中に矢が刺さっていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・」

声も上げず、オギロッドはその場に倒れこむ。

ライはオギロッドを支えようと手を伸ばした。

しかし、本来支えになるはずの左手は今のライには無かった。

オギロッドの体はライの途中で切り落とされている右腕をすり抜け、そのまま倒れこむ。

俺がとっさにオギロッドの体を掴んで、支えた。

オギロッドの重みで俺は膝をつく。

俺の刀とオギロッドの刀が同時に地面にたたきつけられた。

「オギロッド!」

ライが叫ぶ。

「若・・・・・・・」

オギロッドはそれだけを何回も言った。

「オギロッド!」

アグニスがライの袖を掴み、オギロッドを見つめた。

俺の服がどんどん赤く染まっていく。

「若・・・この世界を変えてください。我々の、生きる・・・・理想の世界を・・・造って・・・・・」

「オギロッド!」

「若・・・・・」

「行くな!行くな!!!死ぬな!オギロッド!!!」

ライが叫ぶとオギロッドは薄く笑った。

そして、俺の方に顔を向け擦れる声で言った。

「・・・・・・・・・貫け・・・・・・・己を・・・・・」

「オギロッド・・・・?」

俺はぼそりと言った。

オギロッドは満足したようにゆっくりと目を閉じる。

「ックそお!」

赫菊が叫ぶ。

俺はオギロッドの体をゆっくり下ろした。

そして無言で立ち上がった。

丘を見下ろすとそこには数え切れないほどの軍人が陣を作っている。

「そういうことかよ」

赫菊が歯を食いしばった。

「挟み撃ち・・・・・古い手使いやがって」

俺はそう言った赫菊の横を通りすぎ、大きく深呼吸した。

軍は矢を構え、次を撃ってこようとしている。

「ライ・・・・」

「レイン!?」

俺の様子に異変を感じたのだろうかライが叫ぶ。

「ここからすぐ離れろ・・・・。

 お前も、巻き込むかも知れない」

「レイン!」

ライが叫ぶ。

俺は気付かないうちに能力で風を起こし始めていた。

俺の上着と結った髪が動く。

何か分からない感情と力が俺を支配し始めている。

しかし、俺はそれに逆らうことが出来ない。

前にも感じたことのあるような・・・・黒い感情・・・。

そう昔、俺が生まれる前から知っていた・・・・・・・・・・・・・・魂の感情。

「アグニス!ライを頼む」

「・・・・・・レイン?」

俺の低い声に、アグニスは顔色を変えて言った。

「レイン!」

ライの叫びに俺は振り向き、そこでゆっくり左目を開けた。

途端に俺の体の周りを舞っていた風が強くなる。

「!!!!!!!!」

二人が俺の目を見て動きを止めた。

俺は前を向き、刀を抜く。

そして、そのまま丘を下っていった。

体から放たれた風は辺り一面に舞いはじめる。

「放て!!」

掛け声と共に軍人が矢を放つ。

しかし、俺の起こした突風で、矢は大きく吹き飛ばされた。

大勢の軍人が向かってくる俺からの恐怖で数歩下がる。

俺は一気に軍隊の中に突っ込んでいった。

辺りに吹く風が鳴きつづける。

そこから俺は・・・・・・・・・・。






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