BLUE SKYの神様へ〜古代からの呪い〜



 「マルフィス!」

 「レインか・・・・・・」

 俺は炎のあがる広場の隅に座っているマルフィスを見つけ、隣に座った。

 「大丈夫か?」

 「?」

 「戦争・・・・・・・」

 「・・・・・・・ああ」

 大丈夫・・・・・・・・・・・・。

 マルフィスは俺の曖昧な答えにそうかとだけ言ってドンチャン騒ぎをしている奴らを眺めた。

 俺もマルフィスにつられ騒ぎを眺める。

 少しの間を宴の声が隠す。

 「辛いな・・・・・・・」

 「・・・・・・・?」

 「みんな悲しい顔をしている」

 マルフィスは溜め息をついた。

 「自分の悲しみを隠し、みなの悲しみを和らげようと必死だ。

  その為、さらに悲しそうにしている」

 「・・・・・・マルフィス」

 マルフィスの顔は炎の光を浴びながら悲しそうに笑っていた。

 俺は瞑っている左目を押さえた。

 「なあ、マルフィス」

 「何だ?」

 俺は少し深く呼吸をし、話しはじめた。

  「何故人々は戦うんだ?

  争いはなぜ終わらないんだ・・・・・・・?」

 「・・・・・・・・!」

 マルフィスは俺の言葉に驚き、顔を見てきた。

 「何故そんな事を聞く!?」

 「・・・・・・・・」

 俺は何も答えず、マルフィスを見た。

 「さあな・・・・・・私も教えて欲しい」

 マルフィスはまた炎を見つめた。

 「私も・・・・・・」

 「・・・・・・・?」

 「私には戦わなければならない者がいる」

 「戦う?」

 俺はもう一度マルフィスを見た。

 「先祖からなる呪いの戦だ」

 「呪い!?」

 「・・・・・・・・・」

 マルフィスは一瞬言葉を詰まらせる。

 そして決心したように言った。

 「私の先祖は大天使ウリエルなんだ」

 「だ、大天使ウリエル!!」

 俺はマルフィスの顔を見て、目が点になった。

 大天使ウリエルといえば、初代最神の為に戦い続けた四大天使の一人。

 「古代戦争」つまり、人間と悪魔を天界から追放した戦いで活躍した天使である。

 そのため、天使とされていた四人は最神から水晶を授かった。

 そしてそこから上神が生まれたとされている。

 その大天使の祖先とは驚いた・・・・・・。

 魔王の魂を持つ俺が驚く事もおかしいが。

 「その血のせいで私は元々住んでいた村を追いやられた」

 「何故!」

 「呪いのせいで」

 「・・・・・・・!」

 マルフィスの呪いという言葉に俺は敏感に反応してしまう。

 「古代戦争の言い伝えは、四人の天使が最神から神の称号を授かったとされている。

  そして、そこで話は終わっている。

  しかし、まだ話には続きがあるんだ」

 「続き・・・・?」

 俺は炎の光を浴びるマルフィスの顔を見た。

 「四人の中で裏切り者がいたんだ」

 「裏切り者?」

 「そう、しかしその裏切りの内容もその時の状況も、先祖ウリエルのした事も分からない。

  しかし、我々の血筋は代々ずっとそいつを抹殺するように呪われている。

  そいつは、今もなお生き続け、何かを企んでいるはずだ。

  大天使ミカエル・・・・・・・・」

 「ミカエルが裏切り者?

  しかも生きている?まさか!」

 「いや・・・・・・・生きている。

  アイツはエルフの最後の生き残り。

  そう、『上神フルーラ』」

 「フ、フルーラ!」

 あの、フルーラがエルフでミカエル!?

 俺は体の動きを止めた。

 「私は上神フルーラを殺すためにこのシルメリアにいる。

  今は医療班としているが、いずれはそいつを・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・」

 マルフィスの話を聞いた俺は言葉を失った。

 五大上神のフルーラが古代から生き続けたエルフの末裔でしかも古代戦争の英雄、大天使ミカエルだったなんて・・・。

 それに裏切り者って・・・・俺の魂の初代魔王と何らかの関係があったのだろうか・・・。

 「お前も、何かあるんだろう?

  何かしなければならない事が」

 突然マルフィスに話を振られ、俺は少し動揺した。

 「お、俺は・・・・・・・・・」

 ゆっくり息を吸う。そして・・・・・・・。

 「・・・・・・・」

 しかし俺はマルフィスから顔を逸らした。

 「・・・・・・・・何でもない」

 話しそうになった・・・・・・・・。

 口が動きかけた。

 俺は何も言わず、マルフィスの元を離れる。

 マルフィスは俺の背中を軽くたたき、また宴の様子を眺める。

 俺は逃げるように歩いた。

 騒ぐ声が背中に響く。

 呪い・・・・・・・。

 呪いとは何なんだ?

 運命のことを言うのか?

 俺は息を切らしながら自分の部屋に急いで入った。

 真っ暗な天井を見上げる。

 そしてそのままベットへ倒れこんだ。

 「俺は・・・・・・・俺は・・・・・・」

 左目を開き、自分の手を見る。

 「俺は・・・・・・この世界を・・・・・」

 ヤマトの言葉が・・・蘇る。

 『この世界を変えてみようと思う・・・・・・・』

 「俺はこの世界を変える。

  シラを助け、この間違った世界を変えて・・・・・・」

 目がうとうとする・・・・・・。

 「そして・・・・・・」

 俺はそのまま眠りについた。

 深く、深く・・・・・・・これからの恐怖に打ち勝てるように。











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