BLUE SKYの神様へ〜呪われし長〜


 だんだん軍人達の表情が見えるぐらいの距離へと近づく。

 「弓兵用意!」

 軍人が弓兵をを前にし、構える。

 皆が一瞬怯む。

 「怯むな!進め!!」

 ライが叫び、全体は進んでいく。

 「ってー!」

 相手から放たれた何千もの弓矢が一斉に向かってくる。

 空気を切り裂く音と降り注ぐ矢に辺りは硬直し、動きを止めた。

 このままでは・・・・・・皆がそう思った。

 その時、皆より前に立ったライは、途中から切り落とされた右腕を前へ突き出した。

 一瞬辺りの空気が止まる感覚に襲われる。

 そう思っていると、目の前に半透明の液体が現れた。

 液体はシルメリアの者達を囲み、軍人の行く手に膜を張った。

 何千という矢は瞬く間にその液体に突き刺さり、吸収されていく。

 「これは・・・・・・・・」

 俺は初めてシルメリアに来て、ライと交戦した時の事を思い出した。

 あの時もジェルのような液体がライとの間に立ちふさがり、ナイフが届かなかった。

 「シールド?」

 「いかにも」

 俺の疑問にオギロッドが答える。

 「あれは若が以前の戦争で受けた呪いだ。

  ビースト兵に」

 「ビースト兵?」

 「ビーストを調教して兵器にした隊の事だ。

  戦いで敵同士になったビーストはライを殺さぬように、そしてライにこれ以上殺しをしないようにあの呪いをかけた。

  その為、若は手足をなくした」

 「・・・・・・・・」

 「しかし、若はこうして戦っている。

  仲間を守るという戦いを」

 「オギロッド?」

 「だからワシはそんな若を守り、若の為に刀を握っている」

 俺はオギロッドの顔を見た。

 その目は、シルメリアを治める長への忠誠心に溢れていた。

 そう、まるでフィールが死ぬ間際に見せたあの目のように・・・・・・。

 『レ・・・レイン・・・魔王・・・陛下・・・あなたに忠誠を!』

 「くそ!」

 俺は首を振り、フィールの言葉を振り払った。

 「弓隊」

 「弓隊用意!」

 ライが叫ぶと、隣にいたオギロッドが復唱する。

 弓隊はすばやく前に立ち、弓を張る。

 急に空中へと風が吹きぬけた。

 空を見上げると、翼をもつ獣が何体も宙を舞っている。

 その中には、白い鳥に乗ったコスモスの姿があった。

 コスモスは自分の弓を張り、攻撃の合図を待っている。

 「放て!!」

 矢が一斉に敵軍に向かって放たれる。

 ライは矢がシールドに通過する寸前で解き、矢は敵軍のど真ん中に刺さっていく。

 次々と軍人が倒れていく。

 「いっけぇぇぇ!」

 皆が次々にライを追い越して敵軍に突っ込む。

 数で勝てないのは分かってる。

 だが、この戦いなんとしても・・・・・・。

 突撃の合図と共に砂埃が舞い、刀のぶつかる音が聞こえる。

 「怯むな!行けえ!!」

 ライがそう叫ぶ。

 「レイン、俺達も出陣だ」

 ダングがそう言ってきた。

 「ああ」

 俺はそう言ってダングと共にライの所に行く。

 ルイとスグローグはすでに来ていて、そこに俺とダング、オギロッドが入る。

 「では、作戦開始だ」

 オギロッドが言った。

 「目的を間違えるな。俺達は心臓部を狙う為に行くんだ。

  勝手な行動は慎めよ」

 スグローグが言う。

 「みんな、健闘を祈る」

 ライが落ち着き払った口調で言った。

 「若もどうかご無事で」

 「大丈夫です。ライは私がお護りいたします」

 アグニスが答える。

 俺達は始まったばかりの戦場を抜けだし、隠れるように丘を越え、敵軍本部へと進んだ。

 そう、目的は敵軍の長。

 上神の誰か・・・・・・の首。

 この深き世界を、矛盾した未来を握る者に会いに。









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